ピッチサイドから見たBASEの5年半 vol.1 ~家入さん達がまた何か始めた


2019年10月25日、BASEが東証マザーズに上場しました。鶴岡さん、BASEのメンバーの皆さん、関係者の皆さん、おめでとうございます。
 
East Venturesを代表して上場セレモニーにも参加させていただき、とても幸せで、貴重な体験をさせていただきました。その後の謝恩会は、まるで同窓会のようで、暖かな雰囲気で、鶴岡さんの人柄をあらわしたような宴でした。
 
鶴岡さんが家入さんに出会い、そして太河さんと出会って始まった奇跡の物語を、長きにわたって近くで見ることができたのはとても幸運でした。「奇跡の物語」が今後どのような発展を見せるのか今からとても楽しみでなりません。
 
 
東証からの帰り道、THE BRIDGEに鶴岡さんのメッセージが掲載された。BASEの近くですごした5年半の思い出が、記事とともに蘇り、電車の中で涙ぐんだ。
 
「上場したら、これまでのBASEをまとめて記事にしよう」と前から思っていたものの、どうやっても鶴岡さん本人のメッセージには勝てないし、BASEを創業前からずっと追い続けていたTHE BRIDGEの平野さんにも勝てない。何を書いても蛇足のような気がする。それでもやはり何かを書こうと思い、キーを叩いている。当事者でも部外者でもなく、ただ近くから見ていた僕だから書けることってあるかなって。どこかの媒体や、『調べるお』などのブログで書こうとも思ったが、あえて個人的なものとして書こうと思う。「ピッチサイドから見たBASEの5年半」を。
 



 

家入さん達がまた何か始めた

僕が個人サイト作り、インターネットの楽しさにのめり込んでいた頃、『ロリポップ!』は憧れだった。僕のようなジオシティーズユーザーとは違い、ロリポップ!で作られたサイトはどれもオシャレだった。いつかは僕もロリポップ!でサイトを作りたいな。そう思いながら、日々ジオシティーズにログインして、サイトを更新していた。
 
時は少しだけ流れ、僕は友達に誘われてインターネットサービスの会社の初期メンバーとなった。僕らのサービスは基本的に無料のWebツールであり、しいて言えばジオシティーズ的なサービスだった。それはそれで誇りに思っていたが、心のどこかで『ロリポップ!』への憧れは残っていた。その頃の僕の個人サイトは、ジオシティーズを卒業して『ロリポップ!』上で動いていた。
 
『ロリポップ!』を運営しているペパボも当然憧れの目で見ていたし、それらを生み出した家入さんに対しては「スターを見るような」目で見ていた。
 
「スター」家入さんはペパボを上場させた後、社長を退任し、そしてペパボを離れていった。カフェをやったり、投資をしたり、シェアハウスを作ったり、サービスを作ったり。自由かつ奔放に活動している様子を南平台のオフィスからセルリアン越しにウォッチしていた。家入さんには注目せざるをえない魅力がある。
 
そんな家入さんが数々の炎上を経て、一つのサービスを世に出してきた。


これは良いサービスだな、という感想を当時持った。社内(当時)でも話題になった。「30秒でできる」ECサービス『BASE』は瞬間に広まり、初日だけで1,000ショップも開設されたらしい。


ただ当時は「家入さん達が作ったサービス」という認識であり、当時の僕のツイートもわりとふざけてる。


BASEだけでなく『STORES.jp』も同じように話題になっており、「簡単ECサイト(当時界隈では”スマートEC”などと呼ばれていた気もする)」領域は一大注目領域となった。僕らも自社で類似サービスを早速開発し、BASEリリースから3ヶ月後にリリースした(BASEというかGumroadライクなものになったが)。自社でリリースして見ると、この領域は実は様々な課題もあり、運営を続けていくには忍耐が必要な領域だなぁという感覚を持った(自社の類似サービスは早々に撤退した)。
 
 

部室のような雑然としたオフィス

少し時は流れて2013年夏の話。ブログ経由で知り合った原口さんとランチをした際、原口さんの会社が入居するEast Venturesのシェアオフィスを訪問させてもらった。当時のEVシェアオフィス(六本木ビル)は301〜304までの4部屋あり、Groodは303号室に入居しており、この部屋はEVスタッフも使っているとのことだった。303号室を訪問した際、ちょうどEVの鳥居さんがいたような気がする(鳥居さんはBASE初期のバックオフィス的業務を巻き取っていたそうで、法人化から初期のファイナンスなどの事務作業は全てお任せしていた、と後に鶴岡さんが語っていた)。

304号室はメルカリが一部屋を独占して使っており、面識のあった山田進太郎さんに挨拶しようと思って304の扉を開けたはいいが、部屋の中はピーンと張り詰めた空気で、誰も一言も発せずに黙々とモニタに向かっていた。あまりの緊張感に挨拶もせずにそっと扉を閉めた。
 
一方301号室にはBASEが入居していて、部屋の半分くらいを使っていた。BASEで唯一面識のあったビックボに廊下から軽く挨拶し、部屋に入った。原口さんが鶴岡さんを紹介してくれて、少しだけ挨拶をした。これが鶴岡さんとの初対面である。301号室はメルカリの304号室と真逆の雰囲気で、雑然としてガチャガチャとして、まるで部室のようだった。
 
 
部室の住人達はその2ヶ月後、2億円の資金調達をおこなった。最近は二桁億円調達も珍しくないけど、あの頃は2億円ってのはめちゃ大きくて、ビックリしたのを覚えてる。しかもTwitterきっかけとは、さすが笑


 
この年の暮れ、朝早く起きて、Morning Pitchに行った際に、初めて鶴岡さんのピッチを聞いた。ゆるふわな話し方(今も変わらない)だが、話してる内容は良かったし、質問に対しての回答も完璧だった。
 
 
僕はというと、10年に渡って心血を注いできた会社を辞めることを決めた

創業期から携わってきた「自分の会社」であるサムライファクトリーを去る決断をするのは簡単なことではなかったです。何度も考えがいったりきたりしましたが、決めました。今は新たな世界が広がることにワクワクしています。まだ何も決まっていませんがw

この時点では本当に何も進路は決まってなかったけど、何か新しい世界を見てみたい気持ちでいっぱいだった。部室のようなオフィスで頑張る若者達の姿に刺激されたのかもしれない。
 
 
 
【ピッチサイドから見たBASEの5年半】
Vol.1 家入さん達がまた何か始めた
vol.2 罫線も数字も無い棒グラフ
vol.3 金髪監査役
vol.4 賽は投げられた
vol.5 ちゃんこと神宮司
vol.6 歪みと混沌の闇
vol.7 創業の地への凱旋
vol.8 上場、そして物語は第2章へ

2019/11/07 

ピッチサイドから見たBASEの5年半 vol.1 ~家入さん達がまた何か始めた