森田るい『我らコンタクティ』を読んでみた

奥さんに『アンダーカレント』を貸したらかわりに貸してくれたのが『我らコンタクティ』。マンガ大賞2018の2位に選ばれたらしいこのマンガ。
 

 
ごく普通の設定のカナエが小学生時代の同級生かずきに遭遇し、かずきの荒唐無稽で壮大な夢に乗っかって物語が進んでいくわけだが、なぜか最初っからかずきの夢が実現すると疑いを持たないのだ。無茶ないかにも「マンガ的」な話なのだが、違和感を持たない。なので、最後まで無茶なストーリーなのに現実感を持って進むことができる。これはなぜなのか?を奥さんと議論したが、一つの仮定が導きだされた。
 
カナエや他のキャラクター、そして小物や町並みなど、わりと普通に描かれている中、かずきだけ少しタッチが違うというか、極端に簡素なタッチで描かれてる。そのギャップが現実と非現実を混乱させ、荒唐無稽な物語に現実感を与えるのではないか?と。
 
ふと『暗殺教室』を思い出した。そしてつげ義春作品も思い出した。リアルな描写と異質で簡素な描写が混在した世界。これが没入感に繋がるのかもしれない。
 
内容に関しては「夢を持つことの大切さ」「童心のすばらしさ」などかなぁと奥さんに報告したけど、いまひとつ納得されなかった。
 
 

2018/07/22 

森田るい『我らコンタクティ』を読んでみた

豊田徹也『アンダーカレント』を読んでみた

Twitterのタイムラインで界隈の有識者の方々が「良い」と言っていた豊田徹也『アンダーカレント』を読んでみた。ちなみに豊田徹也氏のことも『アンダーカレント』のことも知らなかった。
 

 
読み終わって「フランス人が好きそうな邦画のようだ」と思った。1冊で読み切りの比較的短い作品ではあるが、なめらかに、そして読んだ人それぞれに問いかけるような「余白」を持った作品だった。どちらかというと暗い作品だが、読了感は悪くない。物語がうまくまとまってるので満足感があった。
 
主題がどこにあるのか考えた。探偵山崎の登場前後の言葉に主題があるように感じた。
 
「あなた自身のことは彼にわかってもらえてたんですか?」(山崎)
「わたしは彼のこと実はなんにもわかってなかったかもしれない」(かなえ)
「人をわかるってどういうことですか?」(かなえ)
 
結局人のことなど他人からはわからない。ましてや仮定で「きっとこうだろう」なんてものは全然間違ってたりするし、わかった気になってるだけで、実はそれは傲慢なことなんじゃないか。そして相手のこともわからないし、自分自身のこともわからない。そもそも「わかる」とはどういうことなのか?
 
そんなことがテーマのように思えた。
 
占い師や医者などに「あなたは○○だ」とか「大丈夫」とか言われると「そうなのか」と妙に納得してしまうことがある。人は自分自身に確信を持てていない。少なくとも多くの人はそうなんじゃないかと思う。確信の持てない人間が確信を持つには何らかの権威を持つ人に「後押し」してもらうのが手っ取り早い。根拠なんてなくてもそういう場合は大丈夫だったりする。
 
話が逸れてしまった。とにかく多くの人は何も「わからず」に生きている。不確実性が加速する現代ならばなおさらだ。
 
 

2018/07/22 

豊田徹也『アンダーカレント』を読んでみた