今から28年前、僕は初めて『Tokyo Walker』を買った。たぶん今頃の季節だったと思う。何の特集だったか忘れたけど、たぶんおしゃれなデートスポット満載だったと思う。
高校に入学したばかりの僕は、相変わらず覇気のない毎日を送っていた。「中学は楽しかったなぁ」なんて思いながら、帰りの電車では一番後ろの車両から一番前の車両までウロウロして、中学の同級生がいないか探したりしていた。
とりあえず部活には入ったが、真面目に励むわけでもなく、なんとなく参加していたが、部活で一緒だった同級生とは仲良くなった。
その中に石井という奴がいたのだが、そいつには彼女がいた。奴と同じクラスの女子。高校入っていきなり彼女を作るなんて…。石井がおもむろにカバンから出して雑誌を読み始めた。「Tokyo Walkerでどこにデート行くか探す」なんて言いながら。
それまで一番背伸びして買った雑誌と言えば『CDでーた』レベルの僕には『Tokyo Walker』という謎の雑誌を読む石井がとてもオトナに見えた。僕はその帰り、本屋で『Tokyo Walker』を買った。これさえ読めばオトナになれる。そんな気がした。
家に帰り、いそいそと『Tokyo Walker』を開いた。今思うとなんてことない内容なのだが、その時は妙に興奮して読んだ記憶がある。こんなオトナの雑誌、家の誰かに見られたら恥ずかしい…そう思って、机の鍵付きの引き出しに入れて保管した。
それからというもの、僕は毎週『Tokyo Walker』を買った。当時『Tokyo Walker』は週刊だったのだ。ウォーターフロント(死語)のおしゃれなレストランや、新しく開業されたアウトレットなど、最新のスポットが紹介されていた。主にデートの参考になるような場所だ。
結局『Tokyo Walker』に書いてあるようなスポットに出かけることは無く高校生活を送るのだが、それでも毎週買った。その頃は主にテレビ番組をチェックするためだけに買っていたような感じだ。
いつしか『Tokyo Walker』を買わなくなった。一時期は東京だけでなく各都市の「Walker」も刊行されていたようだが、時代の流れか、週刊が月刊になり、そして…
【休刊のお知らせ】東京ウォーカー、横浜ウォーカー、九州ウォーカーは、6/20(土)発売号をもって月刊での刊行を休止いたします。生活者の行動様式の変化に伴い、デジタルシフトによる情報発信力の強化を図ることを考慮したものです。永年のご愛顧に御礼を申し上げます。→https://t.co/WaWUKWnT5t pic.twitter.com/TTpg5o6uSk
— 【公式】東京ウォーカー/TokyoWalker編集部 (@TokyoWalker) May 11, 2020
青春を共にした多くの雑誌が廃刊、休刊になる。これは時代の中でしょうがないことだ。寂しいけれどしょうがない。石井は元気かな。
小部屋に置いてある90s雑誌 pic.twitter.com/TowNHBGq2s
— Takanori Oshiba (@takanori1976) March 9, 2020
(小部屋にも行けなくてさみしい)
2020/05/12 Tokyo Walker 青春