盛大に話が逸れてしまった『SHOE DOG』感想文

本を読まないキャラ」でここ数年は過ごしてきたが、今年は「実は本を読んでいるキャラ」でいこうと思って、年明けから本を読んでいる。と言ってもまだ2冊半しか読んでいないのだが…。
 
血統史たらればなし』という競馬の本は読み終わり、『世にも美しい教養講義 超図解・宗教』は読み途中。そして昨日一冊読み終えた。約550ページの大作『SHOE DOG』である。ナイキ創業者フィル・ナイトの自伝的な本。去年発売されて、界隈ではちらほらと評判になっていた本である。カッコイイ装丁で、パラパラと立ち読みしたら面白そうだったので購入した。そしてようやく読み終えた。
 

 
ナイキが創業当初「オニツカ・タイガー」の販売代理店だったことは前々から知っていた。そして袂を分かったことも知っていた。そのあたりのいきさつを知りたかった。本には「ナイキの言い分」が書いてあるので、ネット上で「オニツカの言い分」を補足しながら読み進めた。どっちも言い分はあるだろうし、どちらの言い分にも矛盾はあるのだろう。とにかくオニツカと袂をわかつことになり、結果「ナイキ」が産まれた。これは事実だ。
 
日商岩井(現双日)の件は知らなかった。こんなにも蜜月だったのか。1975年のバンクオブカルフォルニアでの「アイスマン」のカッコイイ振る舞い。「なかなかやるじゃないか」と心の中で呟いた。ちなみに1975年、ポートランドの北、ワシントン州ベルビューの日商岩井のオフィスに赴任していたのが、後に双日の社長に就任する加瀬豊氏である。言わずと知れた俳優加瀬亮の父親だ。産まれたばかりの加瀬亮もベルビューにいた。加瀬豊氏はナイキ創業者フィル・ナイトと親交があったという。「アイスマンはもしかして加瀬豊?」と思ったが、たぶん違う。だが「アイスマン」の風貌を勝手に『アウトレイジ』の石原(加瀬亮がやった役)で読み進めた。ただ石原の風貌は「アイスマン」イトーではなく、キタミの方が近いかもしれない。
 
しかしフィル・ナイトという人はなかなか変わった人のようだ。溢れる情熱、溢れるベンチャーマインドを持つ起業家であるが、リスキーで、情も薄い。こんな上司はちょっと嫌だなぁと思った笑。しかし一代、50年足らずで世界トップのスポーツブランドを築いた手腕は見事としか言いようがないが、戦略はあったとは言え、賭けに勝ち続けたという側面もあるなぁと。万馬券を買い続け、的中し続ける。運も味方したとしか言いようがない。
 
 
 
少し話しが逸れるが、僕がナイキのシューズを初めて買ったのは中学生の時だったように記憶している。1990年頃だろうか。僕らが小学生の頃は『キャプテン翼』全盛期で、誰もがアディダスを求め、そしてプーマを求めた。これらは高価だったので、もっぱらアキレスの『フラッシュパル』や月星の『ジャガー』を親にねだった。そんな小学生時代から中学に進学し、購入したのがナイキだった。少し派手なカラーリングだった気がする。
 
高校時代は「スニーカーブーム」だった。90年代前半はクラシックなローテクスニーカーが流行った。僕はプーマの『SUEDE』を履いていた。アディダスの『スタン・スミス』を履いていた人もいたな。ナイキを履いていた人の印象はあまりない。しかし95年に状況は一変する。『エアマックス95』の登場である。ハイテクスニーカーブームの中心としてブームを超えた存在となった『エアマックス95』、『エアジョーダン』も人気だった。おーランド・マジックの若手PGペニー・ハーダウェイのモデル『エアペニー』も人気だった。ハイテク時代の到来で一気にナイキ有利の状況が産まれた、気がする。
 
僕はと言うと、相変わらず僕はアディダスが好きだった。というより、あまのじゃくなので、「みんながナイキならば僕はアディダス」というレベル。そんなわけでナイキやらアディダスやらリーボック(ポンプフューリーは良かったね)などのハイテクスニーカー全盛であり、コーディネイトの中にハイテクスニーカーなどのスポーツアイテムを取り入れる「スポーツミックス」なるものが流行った。
 
96年の大学の入学式。バイトの先輩から借りたスーツにアディダスの『SEEYA』を履いて出席した。スポーツミックス気取りで意気揚々と出席したが、今考えると中学生みたいなコーディネイトだな。
 
 
 
盛大に話が逸れたので戻すと…もうもど戻さなくてもいいか。では最後に、「あとがき」的なとこで、フィル・ナイトと日商岩井の社長「ハヤミ」とのやり取りが書かれていた。「ハヤミ」とは後の日銀総裁である速水優であるわけだが、その「ハヤミ」にフィルが悩みを打ち明けるのだ。「中間マネジメントがいないので、外部から採用しようとしてるが、上手くいかない」と。話を聞いた「ハヤミ」は「あの竹が見えますか?来年ここに来たときには1フィート伸びていますよ」と静かに語った。つまりは、現状のマネジメントチームを長期的に育てていくのが良いよ、と意味を込めて竹の比喩を使った。なかなか良い話だと思った。
 
 
『SHOE DOG』についてはネット上にもいろいろ感想が公開されているし、ページ数は多いけど、わりとさくっと読めるので、まだ読んでない方は読んでみてもいいかも。では今回はこの辺で。次は石田ゆり子の『Lily』を読もうと思います。
 
 

2018/03/06 

盛大に話が逸れてしまった『SHOE DOG』感想文