Twitterのタイムラインで界隈の有識者の方々が「良い」と言っていた豊田徹也『アンダーカレント』を読んでみた。ちなみに豊田徹也氏のことも『アンダーカレント』のことも知らなかった。
読み終わって「フランス人が好きそうな邦画のようだ」と思った。1冊で読み切りの比較的短い作品ではあるが、なめらかに、そして読んだ人それぞれに問いかけるような「余白」を持った作品だった。どちらかというと暗い作品だが、読了感は悪くない。物語がうまくまとまってるので満足感があった。
主題がどこにあるのか考えた。探偵山崎の登場前後の言葉に主題があるように感じた。
「あなた自身のことは彼にわかってもらえてたんですか?」(山崎)
「わたしは彼のこと実はなんにもわかってなかったかもしれない」(かなえ)
「人をわかるってどういうことですか?」(かなえ)
結局人のことなど他人からはわからない。ましてや仮定で「きっとこうだろう」なんてものは全然間違ってたりするし、わかった気になってるだけで、実はそれは傲慢なことなんじゃないか。そして相手のこともわからないし、自分自身のこともわからない。そもそも「わかる」とはどういうことなのか?
そんなことがテーマのように思えた。
占い師や医者などに「あなたは○○だ」とか「大丈夫」とか言われると「そうなのか」と妙に納得してしまうことがある。人は自分自身に確信を持てていない。少なくとも多くの人はそうなんじゃないかと思う。確信の持てない人間が確信を持つには何らかの権威を持つ人に「後押し」してもらうのが手っ取り早い。根拠なんてなくてもそういう場合は大丈夫だったりする。
話が逸れてしまった。とにかく多くの人は何も「わからず」に生きている。不確実性が加速する現代ならばなおさらだ。